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2002年09月20日

公立?それとも私立?

 第一子であったカオルを幼稚園に通わせることになった時、私の幼稚園選びは、かなり安易なものだった。

公園で出会った、私と価値観の似てそうなママさんたちの勧める幼稚園に決めたときは、他のしつけ系幼稚園、親へのサービス過剰な幼稚園に比べて、比較的「のびのび系でお弁当持参」だったところが気に入ったのだった。園庭は他の幼稚園よりも広く、特に何がどうとか考えるヒマもなく、願書提出の行列に並び、面接を経て、入園の許可が出たときには、ほっとしたものだった。

 実際にカオルが泣き出すまで、私は幼稚園のことを何も知らなかった。のびのび幼稚園とセわれていたのは数年前までのこと。カオルが通った年は、2年保育の入園希望者を全員合格させたために、園舎が手狭になり、一クラス40人超のクラスに入れられて、外遊びの時間は、ものの5分(すべり台を一週したら終わり)という状態になっていた。先生との価値観も全く違う。とにかく自立を声高にかかげるけれども、子供への愛情をみじんも感じない先生に憤りを感じた。子供を取り戻すのだという意気込みで、退園させて、それから幼稚園選びに奔走した日々。でも、そのお陰で、もう今思い出してもすばらしいと思える公立の幼稚園に出会えた。信頼して子供を送り出せるという幸せ。幼稚園、園長先生、担任の先生、保健の先生までもが、すべてパーフェクトな環境だった。そのときに感じたことは、

 1、親は、自分が考える教育観を踏まえて、幼稚園や学校を、持てる能力を全て使って選び出し

 2、価値観を同じくする信頼できる先生に子供を預け、またそのとき、心のそこから、この場所は、うちの子にとって素晴らしい場所だという思いを持ち続けているという環境の上で

 3、もし子供が行きたくないと泣き出しても、自信を持って送り出せるし、きちんと説得できるという確固たる姿勢を貫いていれば

 4、親の価値観を踏襲してしまう子供には、自分にはよくわからないが、きっとここはポジティブな場所なのだというイメージが伝わり、先生も信頼することができる様になっていく

 というプロセスが大事だということだった。価値観の違う先生のところに子供を送り出す不安、やり切れなさ。もう、そんな思いはしたくない。だから、とにかく、私は自分の持てる能力全てを出し切って、子供の学校を探すのだ、そのためにダンナと時期を同じくしてメルベンにわたってきたのだ、という思いを強く持っていた。実際、カオルが小学校に行くときも、学区制がなんだ、と色々な学校を見学してまわり、校長先生にも時間を割いて頂いて価値観が似ていて、本当に尊敬できる方だと思った学校に、子供を入れることに注力したのだ。A4版2枚にしたためた理由書を添えて教育委員会学事課に行き、越境の手続きをしたりすることも、私にとっては苦にならないことであった。後で後悔して、また、カオルの涙を見たくない。それだけを思いながら。

 越境して入った小学校は、公立の学校ながらモデル校であったこともあって、ユニークな学校であった。校舎の造りも開放的で素晴らしかった。そして特筆すべきは、外国籍の子供たちが、カオルのクラスには1割ほどいたことであった。

 中でも1年生の時に韓国から転校してきたKくんは、最初は日本語がほとんど話せなかったのだが、週のうち数時間授業を抜けて、他の「日本語の授業」を受けに行ったりしながら、だんだんと日本語を習得して、クラスの人気者になっていったのを、カオルは間近で見ている。そしてカオルはその男の子のことが大好きで、最初は言葉が通じなくてもオープンな彼の人柄は子供たちの心をつかんでいったのを、自分の友達関係の中で体験しているのである。高学年にさしかかろうとしている微妙な年齢のカオルのことを思うと、現地校はどうかと思ったりもしたが、彼女には、「Kくんの成功体験」を見続けていた経緯がある。彼女にとっては、英語圏の学校にぶち込まれる私は、日本の学校にぶち込まれてしまったKくんと重ね合わせて考えても不思議ではない。そして、彼女は意外にも落ち着いていた。

 そして、そのKくんのママさんとメルベン出発前に話をしたのだが(余談だが、この時は同じクラスの他の韓国のママさん3人も一緒だったのよー。いいでしょー、国際色豊か〜!!私も時々韓国語を話してご満悦!)、そのママさんに「公立と私立とどっちがいいかな」なんて相談を持ちかけてみた。彼女は子供を日本の公立に入れてよかったと思っていて、お友達と遊んだり、色々な経験が出来るのは公立の方だ。だから公立が良い、という話をしてくれた。そして彼女は続けた。

 「私はね、カオルちゃんは、最初は大変だと思うんだけど、日本人が全くいない学校に入れた方が良いと思う。最初の6ケ月、親子ともども苦しいし、ほんとに大変なんだけど、それを過ぎたら、本当に語学も伸びるのよっ!もし日本人が多い学校に入ったら、その日本人に、カオルちゃんは言葉だけじゃなくって、色々な面で頼ってしまうことになるかもしれない。それは、とっても良くないことなのよ。それに、日本人同士でかたまって行動していたんじゃ、何のためにオーストラリアに行ったのか、わからなくなるじゃない。カオルちゃんはね、絶対大丈夫だから、とにかく貴女は日本人の一人もいない様な学校を探して探して探しまくってあげて。」

 彼女の言葉には説得力があった。彼女自身努力家で、日本語も日本のラジオ講座の韓国語講座で勉強したというのだ。その中には、日本語のナチュラルな表現がいっぱい載っていて、しかも韓国語訳(!)もあり、日本人の言いたい表現が韓国語で書かれているので、日本人の言い回しなど、韓国で買った日本語学習の本よりも、役に立ったと言うくらいの人で(もう、彼女の日本語は発音にいたるまでパーフェクト!)、彼女の子供であるKくんが前述の通り、日本で素晴らしい成長を見せているのを知っているだけに、彼女の言葉には経験者にしかわからない重みがある様に思えた。だから、これは学校選びの大きなポイントにすべきなのだ、と実感した。

 そしてこちらに来てみて日本の人から、「ちょっと消極的なタイプは私立、雑草の様に育てたかったら公立」という話があるというのを聞いて、

 あ、やっぱりうちの子は公立タイプね(学費も安いし)

 と決断したのであった。

Posted by akemi at 2002年09月20日 18:42

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