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1996年06月05日

幼児の世界にもイジメはある

今日は特に面白い事もなかったので、昨日書き忘れた事を書こうと思う。

ジャスコの乳児室の隣にプレイ・ルームがあるのだが、そこは滑り台一つだけで後は自由に走り回れるスペールで結構楽しい。そこで男の子3人とカオル、タカシという面子で仲よくあそんでいたのだ。その中に飛び抜けて美形の男の子がいた。まんまるで目がぱっちりの性格の良さが顔に出ている様な男の子だったのだが、髪の毛が縮れていて、日本の学校社会の中では、いカめられてしまうのだろうなぁ、と思いながら見ていた。もしかしたら、性格が、とってもきつそうな子だったら、そう思わなかったかも知れないが、本当に表情の柔らかな優しい感じの子だったので、他人事ながら心配していた。

ところが、遠い未来の事だと予想していた事が目の前で起こってしまったのだ。その男の子を二人の元気な男の子が追っかけ回し(そこまでは良かったのだが)、最後には一人の男の子が蹴りあげ、もう一人の子が馬乗りになったりしているのだ。その子の表情を確認すると、すっかり涙目になっていて遊んでいる様には全く見えなかった。そのまま三人がお団子状態で転げてきて、私の目の前に着たところで、一人の男の子が蹴りを入れようとしていた。私は周りが全く見えなくなって、その男の子の足を払いのけて、「そんな事したら、お友達が痛い痛いになるからやめてね」と言いながら、もう一人の男の子も、押しのけた。

私は理性が及ばずつい手を出してしまったのだが、この行動について、あれでよかったのかと色々と悩んでしまった。それからいじめていた方の男の子のママさん二人は、「ダメよ、ごめんなさい言いなさい」と言って、子供に謝らせていた。その子供達は吐き捨てる様に「ごめんなさい」とだけ行って去って行った。いじめられた男の子のママは最後まで助けなかった。その助けなかったママさんの気持ちも痛い程わかるのだ。「やめてって言いなさい。お友達は、ふざけてるだけなんだから、やめてって言わないとわからないのよ」と遠くから叫んでいた。

ママさんの腕には女の子の赤ちゃんがいた。哺乳瓶でミルクをあげていたから、彼に近寄って慰めることもできない様だった。残された男の子は、私の目の前で泣いていた。泣き叫んでくれれば、こちらの気持ちも少しは晴れたかも知れないが、彼は自分の気持ちを一生懸命押し殺して、それでも押さえ切れずに涙が出てきてしまった様だった。見ている方が辛くて、思わず頭をずっと撫でてしまった。

本当は抱き締めてあげたかったのだが、人それぞれ教育方針が違う。他人が立ち入って勝手なことをしてはいけない。おまけに見ず知らずの女性に子供を抱き締められるというのは、母親として見たくない光景だ。だから、私にとっては頭を撫でてあげることが、その時出来る全てだった。頭を撫でながら、「偉かったね。我慢したのね」とずっと言い続けた。彼は私の方をじっと見た。その目は「いいんです。僕知っているんです。僕は既にもうイジメラレル側の人間なんです」と語っている様だった。

わずか3、4歳の子供がそんな事思うはずはないと思うかも知れないが、私にはそう思えた。それが何とも言えずに辛くて、こちらまで目にジワーと涙がたまってきてしまった。カオルとタカシまで、その男の子の前に座り込んで、じっと彼を見つめていた。カオルに至っては彼の肩に手をかけたり、頭をなでたりしている。私は、それも辛かった。彼にしてみれば、自分より年下の人間に慰められているという事実は屈辱的だったと思う。だからといって、カオルとタカシの行動を止める方法はとっさに浮かばなかったのだ。

そうしているうちに、ママさんが「すみませんね。○○、こっちへ来なさい」と言ったので、彼に「良かったね。ママさんのところに行こうか!」と言って彼を送り出した。そのママさんは、私の事を嫌な女だと思ったに違いない。立ち入った事をしたに違いない。将来の事を思って、日々強く生きる事は大事だ。でも、目の前で実際に泣くしかできない子に対しては、もっと別なフォローがあるのではないか、と色々と考えてしまった。

私は彼の、全てを知りつくした様な涙目が忘れられない。あの「全てを諦めなきゃならない星の下に生まれました」という目は、これから、色々な場面での脱力感に繋がりはしないかと心配でならない。若い時には、前後の見境なく突き進む様なパワーが必要な事もある。そんなパワーは、自己肯定性というか、自分に対する好印象がなければ出来ない様な気がする。若いうちに悟ってしまう必要はないことも多いのではないか、とまたまた思ってしまった。

この話を実母にしたところ、「カオちゃんて人に気遣うでしょ。だから、いじめられても黙って耐えてしまうんじゃないかと思って、おばぁちゃんは今から心配。それを思うと涙が止まらない」と言った。人の事心配している場合じゃないか。

Posted by akemi at 1996年06月05日 21:43

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